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名レース列伝 第9回 「第44回宝塚記念(2003年)」

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○基本情報
 日時  2003年6月29日
 競馬場 3回阪神4日目
 距離  芝右2200m
 馬場  芝 : 良
 結果  1着 ヒシミラクル
     2着 ツルマルボーイ
     3着 タップダンスシチー

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○背景

第9回目の名レース列伝は第44回の宝塚記念です。
前回の安田記念と同じ年の宝塚記念は、ローテーションの穴場となってしまった宝塚記念としては異例の高メンバーの揃ったレースでした。
前年の3歳時に天皇賞秋と有馬記念を勝ったシンボリクリスエスを筆頭に、この年のダービー馬を優勝し3歳馬の身で挑戦してきたネオユニヴァース、前走の安田記念を快勝しこの時点でG1を6勝していたアグネスデジタルという強豪馬2頭。
そして伏兵としても前年の有馬記念を2着しその後オープン特別とと前哨戦のG2金鯱賞を連勝してきたタップダンスシチーに、この年の阪神大賞典を前走の天皇賞では僅差の3着であったダイタクバートラム、前年の宝塚記念の優勝馬ダンツフレームとそのレースで2着馬で善戦マンのツルマルボーイ等多種多様なメンバーが揃いました。
そんな中、本来であればこれらのメンバーを迎え撃つ立場として考えられてもおかしくなかったのが、前年の菊花賞馬にして前走の天皇賞春でG1の2勝目を上げ古馬の王道を行くヒシミラクルでした。
G1での成績だけ見ると同世代の代表としてシンボリクリスエスと双璧をなしてしかるべしと言ったところなのですが、菊花賞は10番人気の伏兵としての勝利でその後の有馬記念は11着、阪神大賞典は12着、産経大阪杯は7着と惨敗、そして前走の天皇賞春で再び7番人気の伏兵での勝利であったため、長距離専門の一発屋として見られていました。
人気もシンボリクリスエスが1番人気の中6番人気という低評価での出走となりました。
また、このレースはジョッキーも当時のリーディングに上位のジョッキーが勢ぞろいし、さらに短期免許として来日中のデザーモにミルコデムーロ騎手も参戦して、レースの盛り上げに一役買っていました。

○レース

まずレースで注目されたのが、一番人気のゼンノロブロイと二番人気のネオユニヴァースの出方になります。
ゼンノロブロイは前年の有馬記念以来の休み明けで仕上がっているのか、ネオユニヴァースは3歳馬として最大の目標であったダービーからの参戦で疲れが残っていないか、という両馬には全く反対の不安要素がありました。
レースが始まってまず先手を取ったのがマイソールサウンドで、ゼンノロブロイは中段の8番手を、その少し前の6~7番手にアグネスデジタルタップダンスシチーが、ネオユニヴァースツルマルボーイと共に後方2~3番手を追走、そしてヒシミラクルは中段の後方の11~12番手あたりを進みます。
概ね有力馬は想定通りの位置取りとなり、不利もなく体制も変わることなく淡々とレースが進んでいきます。
そんな中向こう正面を通過し3コーナーあたりでまず早めに動いたのが好位にいたタップダンスシチーでした。
決して遅いペースではありませんでしたが得意の息の長い足を生かすため、早めに仕掛け外から捲っていき4コーナーから直線に入るあたりで先頭を伺いそのまま押切にかかります。
そして、それとほぼ同じタイミングほぼ同じ位置の内側にいたシンボリクリスエスも徐々に進出していきます。
コーナーワークの差を生かし、インコースをするすると上がっていき直線に入ってまず先頭に躍り出ます。
後方勢からはヒシミラクルが普段の捲るところまではいきませんがコーナーで徐々に進出し外に出して前を向く馬を追いかけ、そのすぐ後ろからネオユニヴァースヒシミラクルを追いかけるように上がっていき、更にその後ろからはツルマルボーイも大外に進路を取って直線にかけます。
一方人気の一角であったアグネスデジタルですが、速い流れの持久力が問われるレースになった為か直線に入る前には力尽き後方に沈みます。。
直線に入って先頭に躍り出たシンボリクリスエスですが、そのまま力強い足取りで後続を突き放しにかかっていきます。
懸命にタップダンスシチーが追いかけますが、その差は中々縮まることはなくこのまま押し切るかに思われましたがラスト1ハロンを過ぎあと少しといったところで休み明けの影響かシンボリクリスエスの足が止まってしまいます。
それを外からタップダンスシチーが懸命に追いかけていたところを外から後続勢が襲い掛かります。
外からじわりじわりと差を縮めて伸びてきたヒシミラクルに、それを追いかけるネオユニヴァース、直線にすべてをかけ大外から飛んできたツルマルボーイの3頭が先頭の2頭を追いかけます。
3頭の中でまずネオユニヴァースの足が止まり脱落し、ヒシミラクルが懸命に前を追いかけタップダンスシチーシンボリクリスエスを必死に交わし先頭に躍り出ます。
そしてそれを追うように大外からツルマルボーイヒシミラクルに襲い掛かりあと一歩のところまで追い詰めましたが、首差ヒシミラクルがしのぎ切ったところがゴールでした。
1着にヒシミラクル、2着にツルマルボーイ、3着にタップダンスシチーで、ネオユニヴァースが4着で最後交わされていったシンボリクリスエスは結局5着となりました。
長距離専門の一発屋的な扱いであったヒシミラクルですが、このレースで競合馬相手に中距離G1を勝利し、そして古馬王道のG1を2連勝を達成し春競馬を締めくくりました。

○感想

当時の最高クラスで、マイルの王者や3歳馬まで幅広いメンバーの揃った宝塚記念ですが、結局勝利したのは古馬G1の王道を進み力馬の中では一番の人気薄のヒシミラクルでした。
過去の長距離G1はともに人気薄での勝利だったため一発屋的な扱いであったヒシミラクルですが、今回は競合馬が相手の中でしっかりとした足取りで優勝しました。
もちろんペースもハイペースの持久力勝負となりヒシミラクルに向いた流れとなったところも否めませんが、それでもこの距離を力でねじ伏せたレースぶりは秋競馬にも期待を抱かせるものでした。
しかしながらこの年の秋に故障してしまい、その後復帰するも再び勝利することはなくこの宝塚記念が最後の勝利となったヒシミラクルですが、このレースの勝利は色あせるものではありません。
一方最後踏ん張りの利かなかったシンボリクリスエスですが、こちらは休み明けの影響がもろに出た形であったのではないでしょうか。
外厩の発達の著しい近年は休み明けからの好走も当たり前となっていますが、当時はまだまだ前哨戦を使う馬が当たり前で休み明けは不利と思われていました。
所属厩舎の藤沢厩舎は馬優先主義として、一般の厩舎よりレースの数を使わないことで有名ですが、今回のレースに限っては完全に裏目に出てしまったと思います。
また、この年の宝塚記念は本来の目指すべき宝塚記念の理想となる出走メンバーが揃っていたように思えます。
古馬の王道として天皇賞春の勝馬を含める古馬の強豪馬が多数出走し、3歳のダービー馬に安田記念勝馬まで多種多様なメンバーが揃ったことで春のグランプリに相応しい顔ぶれでした。
近年は競合馬はあまりレースの数を使わないケースも多く、距離体制も明確となり更に強豪オーナーによる使い分けも激しいため一つのG1に様々なジャンルのメンバーが揃うことが少なくなってしまいました。
しかし、未知の強豪との対戦がその馬の価値を上げてくれるものだと思いますので、今後も今回のようなメンバーでの宝塚記念を見てみたいものです。

○リンク 

youtu.be